【書評】伊達政宗かっちょいいっ!ってなる『馬上少年過ぐ』
ゴールデンウィークに仙台に行ってから、すっかり伊達政宗のファンになったので、司馬遼太郎さんの『馬上少年過ぐ』を読みました。
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1978/11/29
- メディア: 文庫
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『馬上少年過ぐ』は伊達政宗の生涯を描いた短編小説となっており、ボリュームはそんなに多くないのですが、伊達政宗の生い立ちや生き方がはっきりと描かれていて、とてもワクワクする内容でした。
仙台の青葉城資料展示館に行ったときも伊達政宗すげーと思ったのですが、この小説を読んでよりかっこいいと思うようになりました。
いくつか伊達政宗のかっこいいところをご紹介したいと思います。
和歌や詩がうまいところがかっこいい
仙台に行って、初めて知ったのですが、伊達政宗は歌道が堪能であったということに驚きでした。
ただ、実際に政宗が作った歌をみてみると実に見事です。
いくつか政宗の歌を紹介します。
- 辞世の句(人がこの世を去る時に詠む歌)
曇りなき心の月を先だてて 浮世の闇を照らしてぞ行く
(意味は諸説ありますが、「先のわからない戦国の世を月の光を頼りに道を進むかのごとく、自分が信じた道を頼りにただひたすら歩いてきた」という意味です。)
- 公卿を招いた席で詠んだ歌
咲きしより今日散る花の名残まで 千々に心のくだけぬるかな
意味は、
桜の花は咲いたが、今、目の前で散っている。その散る花の名残りを楽しみながらも、(我らの行く末に)ついつい心を奪われてしまうのである。 伊達政宗の和歌と心底について
です。
もう歌のセンス高過ぎです。笑
僕もこんな歌をさらっと詠めるようになりたいです。
晩年自身埋葬する場所を決断するところがかっこいい
晩年、政宗はほとどきすの鳴き声を聴くため、経峰という山に山駕籠を利用して登るのですが、その際に、
(大学は政宗の家来です。)
と言って、自分の死んだ後、ここに埋葬せよと杖を立て、家来に命じます。
このときの政宗をこの小説では、
──しばらくたたせられたが、急に心細きご様子をなされて。 と、この瞬間の政宗を、いう。霊感が政宗の面上にさざなみだっているということをそのような表現でいっている。 司馬遼太郎.馬上少年過ぐ(新潮文庫)(Kindleの位置No.2157-2159)..Kindle版.
という表現をしています。
たしかに僕も実際に政宗の霊廟に行った際は、とても自然豊かで静かな場所だと感じました。
約400年ほど前にも政宗が同じ場所に立っていたということを思うと、すごいワクワクします。
その霊廟の写真はこちらです。
迷いのない生き方がかっこいい
なんと言っても僕が伊達政宗の虜になってしまったのは、その迷いのない生き方にあります。
重要な局面で政宗は、決断が早く迷いなく行動します。
例えば、父親が敵対する武将に人質として捕らえられてしまった際は、すぐ駆けつけ、終いには父親ごと敵を銃で打てと家来に命じる場面があります。
普通であれば、父親の命を考慮しなんとしてでも助けようとするのですが、政宗は父親と伊達家の運命を交換することはできないと感じ、
──殺すべきである。 司馬遼太郎.馬上少年過ぐ(新潮文庫)(Kindleの位置No.2505-2506)..Kindle版.
と決断しています。
また、弟の小次郎と対立していた政宗は、ある日食事に毒を盛られます。
ただ、これを未然に防ぎ、周囲に事態を告げ、
「小次郎は純良な若者である。しかしかれが生きているかぎり伊達家のわざわいは絶えない。かれはおそらく死ぬだろう」 司馬遼太郎.馬上少年過ぐ(新潮文庫)(Kindleの位置No.2538-2540)..Kindle版.
と言って、小次郎を部屋へ招き、太刀で刺し殺しています。
たしかに毒を盛られたとはいえ、普通であれば牢獄などに入れ、厳重に取り締まる程度だと思いますが、このときも政宗は迷いなく殺害しています。
家族を二度も殺してしまうという残虐さはありますが、このあたりの迷いのない生き方が政宗らしくかっこいいと感じました。
そんな感じで仙台に行った僕からすれば、大変ワクワクした内容となっている小説で大満足でした。
これから仙台に行く人におすすめの一冊です。